2001 4/29(日
 知人に話していて思い出したので、今日は小学校の時の話をしようと思う。

 なんだかわからないけど小学生の頃、私の中で、おしいれに隠れるのがブームだった。
 お母さんに怒られそうな時など緊急時はもちろん、別に意味もなく、いつもおしいれの中に隠れていた。
 どんなに布団がぎゅうぎゅうにつまっていても、とりあえずなんとか潜り込んで隠れるのが楽しかった。
 あんまり長いこと隠れていて、そのまま寝てしまったこともある。
 あまりおしいれに隠れてばかりいるので家族にはバレバレなのだが、それでもやっぱり隠れたかった。
 基本的におさるさんレベルなので、一度味をしめたらしばらく続ける、それが幼少期の私だ。
 たとえば小学1年の時、先生が職員室から教室へ来るまで「教室の中で待っていなさい」と言われているのに、
 わざと教室の外で待っていて、先生の姿が見えるとキャーキャーわめきながら教室へ走って戻る、というのを、
 クラスの他のみんなが飽きてやらなくなっても、私は最後まで続けていた。

 さて、おしいれに隠れるというと、思い出すことがある。

 幼稚園と小学校1・2年が同じクラスで、家も近所だったのでよく遊んだ、K君という男の子がいた。
 K君はレゴブロックとファミコンを持っていて、
 私はそのレゴブロックとファミコンで遊びたくて、よく「遊ぼー」と声をかけていた。
 K君はちょっとナヨっとしたところはあるが、気の弱い、というか優しい子だったと記憶しているが、
 今思うと、しゃべり方がふにゃっとしていたり、行動や態度がちょっと普通に比べて変わっている所があった。
 細かいことはもう忘れてしまったが、とにかくK君はすこーし変わっているかな、というのを、
 小学校2年も後半になると、私は子供心にうすうす感じとっていた。

 こうなると、子供は残酷だ。
 ある日、これまた近所に住むS君が、うちに遊びに来た。
 S君は今までうちに遊びに来たことはなく、この日は「うちにファミコンがあると思ったから来た」のだったが、
 残念ながらそれは彼の勘違いで、うちにはファミコンは無かったので、することがなく、K君を呼ぶことになった。
 K君の家に電話したら、近所なのでほどなくK君はうちへやってきた。ピンポンとドアホンが鳴った。
 私は、S君をひっぱってとっさにおしいれへ隠れ、息をひそめた。

 2階へ上がってきたK君は、誰もいないので、また下へ降りて行った。
 下で、おばあちゃんが、「さっきまで上にいたわよ?」と言っているのが聞こえた。
 それを聞いて、クスクス笑いながら私とS君はおしいれの外へ出て、K君がもう一度上がってきたら、
 何食わぬ顔で、「何やってんの、さっきから居たよ?」と言って、K君をからかったのだった。

 それでも、K君は2年の終わりの文集では、
 「すきなともだち おとこのこ〜〜くん おんなのこ ふらに(仮名)さん」と書いてくれたのだった。

 3年生になりクラス替えがあり、K君とは別のクラスになったのだが、お正月にK君から年賀状が届いた。
 その年賀状には「ことしもいっしょにあそびましょう」と書いてあったのだが、
 男の子を意識し始めていた私は、なんとなく恥ずかしいと感じたのだった。

 年賀状の返事は出さなかった。

 K君はそのままやっぱり少し変わった人に成長していった。
 近所なので公立ならば同じ中学校に行く筈だったが、私の中学校は不良が多かったり色々問題の多い中学だったので、
 いじめなどを恐れてか(もちろん、詳しい事情は知らないから周囲の噂だが、多分そうだと思う)
 K君はひとつ離れた学区域の中学へ進んだ。
 が、なぜわざわざ遠い所へ通うのか、なんかあったんじゃないのかということで、
 その中学でも浮いていたという話は後で聞いた。

 今でも本当に時たま、K君とすれ違う事がある。
 私は当時と比べ多少マイナーチェンジしているので向こうは気づいていないのかもしれないが、
 私は歩き方や外見の特徴から、K君だとすぐに解る。
 そのたびにおしいれの事件を思い出し、少し胸が痛む私である。