2000 11/5
 今回は小学生の間ずっと通っていたスイミングスクールでの出来事である。
わたしと、Aちゃんと、Bちゃんと、1学年下のCちゃんは、同じ級だから同じ曜日で同じ時間で、小学校も同じ。
スイミングの終わったあとも、更衣室のマッサージ機で遊んだり、あちこちでぐちゃぐちゃ遊び回る悪ガキ4人組であった。
特にAちゃんとCちゃんはスイミングスクールと同じマンション(マンションの3階がスイミングスクールだった)に住んでいて、 よくスイミングのあとに遊びに行った。

 さて私が小学校5、6年生の頃の話である。
私達のスイミングのクラスの先生はS先生T先生。ふたりとも今思えば20代半ばか後半くらいの男性だ。
私達4人組は、その先生2人組と妙に敵対していた。
S(呼び捨て)きもちわるい」「Tってハゲだよ」「死んじまえ」とかかげでさんざん言っていた。
別にS先生もT先生も普通だったんだけど、思春期入りかけのお嬢ちゃん達はなんとなく年上の男性に過敏に反応していたのだろう。
私はバカなのであんまりよくわかっていなかったが、他の3人につられて、「きもちわるーい」とか言ってた。

 ある日のこと、Aちゃんが言った。「ねえ、Sに決闘を申し込まない?」
私達は「いいねぇー!」とその話に乗った。
そして、私達4人組は「ドリームガールズ」を結成した。
ドリームガールズは4人姉妹で、上から愛本まなみ、かなみ、ななこ、ゆかと名前をつけた。私は背がちっちゃかったので一番下の愛本ゆかという設定であった。
上の兄弟になったまなみ役のAちゃんなど高校生の設定で、ちゃんと通っている高校の学生証や校章まで考えていた。

 なんとドリームガールズは「エスパー」で、空が飛べたり特殊な力が使えた。
ドリームガールズ・チェンジ!」とかなんとか言ってポーズをとると変身した。ちゃんとポーズも決めてあって、うちらは幾度となくそれを練習した。
藁半紙を買ってきて、藁半紙に漫画を描いた。それはドリームガールズの前にあわられる気持ち悪いSTをやっつけるというストーリーであった。
題名は「夢の伝説」だった。4人がめいめいに好き勝手に描いていたので何巻もあった。

 そして、確か、決闘状も書いて、漫画と一緒に、渡しにいった。
「決闘を申し込む!」私達は叫んで、それをSにたたきつけるように手渡した。


 決闘のその日に、マンションの裏にほんとうにS先生はやってきた。(仕事の都合だとT先生は来なかったが)
私達はめいめいに武器を仕込んであった。わたしはその辺にあったモップを持っていた。
Bちゃんなど小石をスカートのポケットにほんとうに仕込んでいた。Cちゃんはよくといだ鉛筆を持っていた。危険だ。
そして、決闘がはじまった。S先生もモップを持って、「やーい」とか言いながら追い掛けてきた。
私達はギャーギャー動物のように騒ぎ回って応戦した。私も全速力で逃げ回っていた。

 ぐるっとマンションを回ったりして逃げて、そのうち、なんだか様子がおかしいことに気づいた。なんだか静かなのだ。
おそるおそる戻ってみると、Sのこめかみに、Bちゃんの投げた小石がぶつかったらしく、ちょっと血が出ていた。Bちゃんはちょっと神妙な顔をしていた。
Aちゃんがポケットからバンドエイドを取り出した。しかしそれはピンク色のキティちゃんかなんかのバンドエイドで、S先生は「こんなの恥ずかしくてつけられねーよ!」とか言っていた。
うちらはちょっと悪かったかな、なんて思って、ごめんなさいとか謝ってみた。
するとSは、悪いと思うなら、お詫びに写真を撮らせろと言ってきた。すぐにSはカメラを持ってきた。
Sは「ドリームガールズ・チェンジ!」だかなんだかのポーズとか、バシャバシャたくさん撮った。
わたしはパンツが見えていたらしく「おまえ今パンツ見えてたぞー!うわー、はずかしいー」と言われた。確かとっても恥ずかしかった。

 そして後日、S先生から私達に、S先生が描いたマンガが渡された。
内容は、S先生ドリームガールズを倒して、スイミングスクールの女の先生、M先生と結ばれるというむちゃくちゃくだらないものだった。
でもS先生は漫画家志望だったのか、絵はとっても上手だった。
でもドリームガールズがひどくブザイクに描かれていた。ブサイクというか、ものすごい怪物みたいに描かれていて、 目は血走って垂れたオッパイとかをふりみだして火とか吹いていた。
私達は激怒して、気に入らないカットは修正液で塗りつぶしたりマジックでぐちゃぐちゃにした。
するとなんとなくせいせいした。

 それからもドリームガールズは何度か漫画を描いたり、集まって遊んだりしていた。
なかでも私は漫画家にあこがれていたので、夢の伝説の続編をたくさん描いて、よくみんなに見せていた。
しかし、Bちゃんは、忙しいとか色々言って、だんだん集まりに参加しなくなった。
あるひBちゃんと学校ですれ違った時、「たまにはドリームガールズで集まろうよ!」と誘ってみたら、
バカバカしい」と一言で片づけられたのであった。
それをきいて、なんとなく私も冷めてしまって、かくしてドリームガールズは解散(自然消滅)したのであった。

 なぜあのときS先生は写真を撮ったのか。
そういえば、スイミングスクールでリレーをしたとき、アンカーの私が1位でゴールした時、Sがプールに飛び込んできて「やったーやったー」と言って抱きついて来たことがあった。
わたしは「やめろよ!」とか言って股間を蹴りつけたのだが。
そういえば、スイミングのあとサウナに入っているとき、女の子の更衣室側のサウナなのに、S先生が入ってきたことがあった。しかも「どっちがあったかいか確かめにきた」とか言って随分、長居をしていた。

  まさか、ひょっとして、もしかすると・・・ロリコン????

 それはさておき、未だに小6の私の描いた「夢の伝説」はタンスに眠っている。
何しろ藁半紙も描かれたシロモノなので少々見にくいが、取り込んでみたのでそのうちアップすると思う。乞うご期待。
他のメンバーやS先生は覚えていないかも知れないけど、私の中では大きな大きな思い出なのである。


 ・・・ところで事件(?)から10年ほどたって初めてきづいたのだけど、
 AちゃんってS先生のことが好きだったんじゃないだろうか。
 わざとちょっかいを出したり、いたずらしたり、でもS先生が近くに来るといつもの強い態度じゃなくなるAちゃん。
 当時のAちゃんの態度とか思い返すと、なんかそんな気がする。
 小学生のお嬢ちゃん、ロリコンにやられなかっただろうか。ちょっと心配になってみる。<